メルク
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種類 | 株式会社 | ||
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市場情報 |
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略称 | メルク、MSD | ||
本社所在地 | アメリカ合衆国 ニュージャージー州 | ||
設立 | 1891年 | ||
業種 | 医薬品 | ||
事業内容 | 医薬品研究・開発・製造販売 | ||
代表者 | リチャードティー・クラーク(Richard T. Clark) | ||
売上高 | 2,419,770万ドル(2007年) | ||
従業員数 | 約62,600人 | ||
決算期 | 12月31日 | ||
関係する人物 | George Merck 創業者 | ||
外部リンク | www.merck.com | ||
メルク (Merck & Co., Inc., NYSE:MRK) は、世界的な医薬品大手企業である。1891年設立。本社はアメリカ合衆国・ニュージャージー州。2007年の売上高は2,419,770万ドル。従業員数約62,600名。株式がダウ平均株価の構成銘柄に選ばれており、1990年代までは医薬品業での世界売上高が断続的にトップであったが、2000年代はM&Aの加速によってサノフィ・アベンティス、ファイザー、グラクソ・スミスクラインなどに抜かれた。しかし2009年11月に米同業大手のシェリング・プラウを買収し、新生メルクとなりファイザーに次ぐ世界2位に返り出ている。本項では日本法人についても併せて記述する。
目次 |
創業のいきさつ
1827年創業のMerck KGaAの創始者エマニュエル・メルク (Emanuel Merck) の孫ジョ-ジ・メルク (George Merck) が1891年に、アメリカの拠点としてニューヨークにMerck & Co., Inc.を設立し事業を始めた。しかし、第一次世界大戦によってドイツ国外の財産などを喪失し、アメリカのメルクとドイツ本家のメルクはそれぞれ独立した医薬品企業として今日まで発展している。
社名について
このような両社の経緯のため、米国メルクはアメリカ、カナダ以外の地域では「MSD」(Merck Sharp & Dohme)の名称を使用している。逆にドイツのメルクは、アメリカ、カナダ以外の地域では「MERCK」の名称を利用し、アメリカ、カナダでは「EMD」の社名を利用する。
同様の例として、ドイツのシエーリングのアメリカ現地会社が第一次大戦によって分断し、1952年に米国企業として再出発したシェリング・プラウがある。しかしドイツのシエーリングは2007年にバイエルに買収され、シェリング・プラウは前述の通り、米国メルクに買収されている。
日本でのメルク
米国メルクの日本法人は萬有製薬(万有製薬)株式会社である。
1954年に自社開発の抗生剤をはじめとする医薬品の製造販売を行っていた萬有製薬と米国メルク (MSD) は提携し、日本メルク萬有 (NMB) 株式会社を合弁で設立。同社は萬有が販売する米国メルク製品の輸入(導入)・発売元となる。NMBは1984年にMSDが資産管理子会社を通じて萬有製薬への出資率を高め経営権を取得した際に合弁解消のうえ萬有製薬と経営統合している。
1970年にはMSD直系(米国メルクの資産管理子会社を通じて100%出資)の日本法人として、日本MSD株式会社を設立した。同社はMSD製品・医薬品原料の輸入やライセンスの管理、メルクマニュアルの版権保有などを行う企業であり、MSD導出品のMMRワクチン(日本では化血研が販売)など一部製品については万有製薬ではない他社と契約し、開発・販売するようにしている場合もある。
2003年1月に米国MSDが万有製薬を完全子会社化する事を発表し、同月から同年3月上旬にかけて日本MSDが上場している万有製薬株式をTOBで全体の80%以上を買い付けることに成功し、2004年3月に日本MSDと萬有製薬(登記名称)は合併して新生万有製薬株式会社となり、名実ともに米国MSDグループ100%出資の日本法人となった。
2008年1月にはメルク万有株式会社 (Merck-Banyu Co.) に社名を変更する予定であったが、関連の追加調査が確定するまで延期すると追加発表されている。
2010年3月には、2009年11月の米国メルクのシェリング・プラウ買収に伴い、日本法人も2010年下半期にシェリング・プラウ日本法人と合併すると発表。同時に合併後の新日本法人の社名も、米国メルクのアメリカ、カナダ以外の地域での名称、MSD株式会社(MSD K.K.)に変更すると発表されている。
ドイツ・メルクの日本法人としてメルク株式会社(化学事業)および、メルクセローノ株式会社(医薬品事業)がある。詳細はメルク (ドイツ)を参照。
Merck & Co., Inc.の主要医薬品
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(日本では未発売・商品名が異なる製品がある。アルファベット名の後の製品名は日本での商品名)
- ゾコール® (ZOCOR)(リポバス®):シンバスタチン・HMG-CoA還元酵素阻害薬(高脂血症治療剤)
- フォサマックス® (FOSAMAX)(フォサマック®、ボナロン®):ビスホスホネート製剤(骨粗鬆症治療剤)
- コザール/ハイザール (COZAAR/HYZAAR)(ニューロタン/プレミネント):A-II受容体拮抗薬/A-II受容体拮抗薬とサイアザイド系利尿薬の合剤(降圧剤)→デュポンメルク社が開発。
- シングレア (SINGULAIR)(シングレア、キプレス):ロイコトリエン受容体拮抗薬(気管支喘息治療剤)
- バソテック/バセレティック (VASOTEC/VASERETIC)(レニベース):ACE阻害性降圧剤
- プリマキシン (PRIMAXIN)(チエナム):カルパペネム系抗生物質製剤
- トルソプト/コソプト (TRUSOPT/COSOPT)(トルソプト):炭酸脱水酵素阻害剤(緑内障治療薬)
- プロスカー (PROSCAR):5α-還元酵素II型阻害薬(前立腺肥大症治療薬)
- クリキシバン (CRIXIVAN)(クリシキバン):HIVプロテアーゼ阻害剤(同薬効世界初)
- マクサルト (MAXALT)(マクサルト):5-HT1B/1D受容体作動型片頭痛治療剤→日本では杏林製薬が輸入元としてエーザイから発売されている。
- ジャヌビア®(JANUVIA®)(ジャヌビア®・グラクティブ®) : シタグリプチン、DPP-4阻害作用による糖尿病治療薬。日本では小野薬品との併売。
メルクマニュアル
1899年に米国メルク社が発刊した『Merck's Manual of the Materia Medica』が源流で(後に『The Merck Manual of Diagnosis and Therapy』となる)、膨大な医学情報をコンパクトに要領よく掲載し、現在まで基礎的・スタンダードな医学書として世界中の医療従事者を中心に活用されている専門書が『メルクマニュアル』である。
1997年には家庭・一般向けに専門用語を出来るだけ平易な表現にした『The Merck Manual of Medical Information-Home Edition』が出版されており、日本ではどちらも翻訳版が日経BP社から出版されている。
メルクインデックス
『メルクインデックス』(Merck Index) は、米国メルク社が発行している、化学物質、薬品、および生物製剤の事典。現在は書籍とCD-ROMからなっている。化合物名(及びその別名)とCAS番号や構造式のほか、融点、沸点、密度などの物性データ、LD50などの生物学的データ、参考文献などを知ることができる極めて便利で詳細な事典である。
外部リンク
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