相似
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相似(そうじ)とは、互いによく似ていることを意味する。
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図形の相似
ユークリッド幾何学において、二つの図形 C と C' が相似 (similar) であるとは、ユークリッドの運動(平行移動、原点を中心とする鏡映、原点を中心とする回転)および、原点を中心とする拡大・縮小を有限回組合せることにより、C と C' を一致させられることをいう。すなわち、片方を拡大または縮小することで、もう一方と合同となるということである。このとき、C ∽ C' と表す。おおざっぱには「縮尺の違いを除いて同じ形」である事を指す。
図形が互いに相似であるという関係は、同値関係である。
2つの相似な図形の対応する点どうしが通る直線が1点 O に集まるとき、O を相似の中心と呼ぶ。
三角形の相似条件
- 3組の辺の比がすべて等しい(三辺比相等)。
- 2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しい(二辺比夾角相等)。
- 2組の角がそれぞれ等しい(二角相等)。
相似な図形の性質
- 対応する辺の比はすべて等しい。
- 対応する角はそれぞれ等しい。
- 相似な平面図形の相似比を m : n とすると、面積比は m2 : n2 である。
- 相似な立体において、相似比が m : n のとき、表面積の比は m2 : n2 であり、体積比は、m3 : n3 である。
関連項目
行列の相似
n 次正方行列全体の集合を M(n) とする。M(n) の二つの元 A と B とが相似(similar)、同値(どうち、equivalent)あるいは共役(きょうやく、conjugate)であるとは、A = P -1BP なる正則行列 P が存在することである。これを A ∼ B と表す。また、上式のように行列 B を正則行列 P によって行列 A に変換することを相似変換という。
行列の相似関係は、同値関係である。 互いに相似な行列をひとまとめにすることで、M(n) は同値類に分割される。ベクトル空間 V の基底を一つ取り、正方行列を V 上の線形変換と見たとき、V の基底を別の基底に取り替えることと、線形変換を表す行列を相似なものに取り替ることとは同値である。すなわち、n 次元ベクトル空間 V 上の線形変換と M(n) の共役類(相似関係に関する同値類)は一対一に対応する。
生物における相似
別種の生物間で、機能的・形態的に同じ役割を果たす構造が、それぞれ別の構造に由来して発達してきたことを相似 (analogy) と言い、そのような器官を相似器官という。相同 (homology) の対義語。
例えば、昆虫の翅と鳥類の翼は空を飛ぶという機能は共通だが、昆虫の翅は外骨格の腹部背板が伸張してできた物であるのに対し、鳥類の翼は脊椎動物の前足が変形した物であり、その由来が別であるため相似である。同様に相似な例としては、魚類の背鰭とイルカの背鰭、サツマイモのイモとジャガイモのイモなどがある。見方を変えると、同一の機能的目的のために、別個の器官を起源として、類似の構造が生まれた、と考えられる。このように見た場合、異なった起源のものが共通の条件の下で似通った形をとることを収斂進化という。
この相似の概念は器官だけに留まらず、生化学物質にも応用される。具体的には、脊椎動物のヘモグロビン、軟体動物のヘモシアニンは、生化学的には別系統の物質であるが、酸素を体組織に運搬するという機能は同一であり、相似の例である。特にこのような相似を生化学的相似といい、対義語として生化学的相同がある。
関連項目
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