結婚
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結婚(けっこん)とは、主に男女が夫婦になること。あるいは夫婦間の結びつきのこと。
かつては正式な表現として婚姻(こんいん)のほうが用いられることが多かった[1]が、最近は「結婚」という表現が用いられる頻度がむしろ増えている。また、俗に(夫婦の)「契り(ちぎり)」ともいう。
なお、結婚していないことを未婚(みこん)、既に結婚していることを既婚(きこん)といい[2]、未婚または既婚の者をそれぞれ未婚者、既婚者という。
目次 |
定義
結婚の定義はいくつかあり、日本においては、婚姻届を出し戸籍に記載される婚姻を結婚と定義することもある。
その他にも以下のような要素に着目した様々な定義のしかたがありうる。
- 社会的結びつき
- 経済的結びつき
- 人間的結びつき
- 法的正当性
これらの根底にあるものは「契約」という概念である。親子の関係はタテの関係であり、生まれたら自動的に関係付けが発生し、原則的に一生の間不変である。一方、結婚というのは男と女が結びつくヨコの関係であるとされる。一般的に血縁関係にない男女であるので、結び付きは契約的になる。
結婚は必ずしも同居を伴わず、単身赴任等で離れて暮らしていても婚姻関係は成立する。つまり親族以外の両性の心理的繋がりが婚姻状態であると言える。
内縁関係であっても、実際に夫婦関係が構築されているのであれば、結婚と同様に扱われるケースがある。
広辞苑では「婚姻」の定義として、「結婚すること」とした上で、「夫婦間の継続的な性的結合を基礎とした社会的経済的結合で、その間に生まれた子が嫡出子として認められる関係」としている。「結婚」の文字は「婚姻」の文字と共に漢籍を由来とし、日本では平安時代より用いられてきた。しかし、当時はどちらかといえば「婚姻」の文字の方が使用例が多かった。明治時代になり、この関係が逆転して「結婚」の二文字が多く使用されるようになった(出典:日本国語大辞典第二版)
フランスにおいては、結婚は契約として解される。そのため、契約書を取り交わす必要があり、挙式だけでは(それが教会で行われようと)法的に結婚を行ったとは認められない。
形態
形態による分類
- 一夫一婦制
- 一人の男性に対して、一人の女性という結婚形態。近代国家の多くはこの婚姻制度のみを採用している。近代以前はしばしば妻のみに貞操義務を要求されたが、これは男性による女性の支配だとして多くの国で撤廃され、一部の国では男女に貞操義務が課された。
- 一夫多妻制
- 一人の男性が複数の女性と婚姻関係を持つ形態。前近代においてはほぼすべての社会で実践されていた。現在でも中東のイスラム社会などに認められる。また、アメリカ合衆国のモルモン教徒も近年までは、一夫多妻制を採用していた。ただしこの制度を採用している地域の男性住民のすべてが複数の妻を持っているわけではない。イスラム教の一夫多妻制は、イスラーム教の公式見解に従えば聖戦によって男性が戦死する可能性が高かったため、未亡人や遺児の生活を保障するために始められたとされる。複数の妻が持てるのは経済的な余裕のある男性に限られる。一夫多妻制は男性による女性支配の原因となっているとされているが、西ヨーロッパ・アメリカの知識人の中には自国の女性差別を隠蔽するためにこのことを取り上げるものもいるという批判もある。
- 一妻多夫制
- 一人の女性が複数の男性と婚姻関係を持つ形態。現在この結婚制度を正式に法的に採用している国はないが、チベットなどで妻が複数の兄弟を夫とする慣習がある。
- 集団婚
- 集団婚は、複数の男性と複数の女性が婚姻関係を持つ形態。社会進化論が唱えられていた19世紀には、私有財産制度以前の原始社会で行われていたと考えられていたが、最近の文化人類学や考古学、進化生物学の知見からは、その存在が否定ないし疑問視されている。
- 同性結婚
- 男性と男性、女性と女性が結婚すること。法制上これを完全に認めている社会は多くないが、近年大きな議論を呼びつつある。
- 日本国では制度上、婚姻届は受理されない。1998年に川崎の若宮八幡宮で神前結婚式が行われ反響を呼んだ。
- オランダ、ベルギー、スペイン、カナダ、南アフリカでは認められている。また、同性カップルに結婚と同様の法的効果を認めている国に、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、フィンランド、ニュージーランド、イギリスなどがある。
その他の種類
- 近親婚
- 血の近い者同士が婚姻関係を結ぶこと。多くの社会でタブーとされる。
- 内縁
- 婚姻届の提出など、制度上正式な婚姻とするためのことをしないものの、同居する、経済基盤を共にするなど結婚しているのと同様の関係を指す。
- 重婚
- 一夫一婦制の社会で、既に配偶者が居るのに他の者とも結婚すること。
- 通い婚
- 男が女の元に、あるいは女が男の元に通う形態。夫が妻の元に通う場合は妻問婚(つまどいこん)とも言う。源氏物語に見られるように、かつての日本でも見られた形態である。
結婚と宗教
結婚はあらゆる地域で宗教と密接に関わっている。
キリスト教
- 正教会では機密として扱われる[3]。正教会では婚配機密といい、機密である為信徒同士でのみ行われる。神品 (正教会の聖職)の内、輔祭・司祭は妻帯が可能であるが、輔祭になる前に結婚しなければならない。また神品の再婚は認められない。主教は修道司祭から選ばれるため、主教は独身者である。離婚は神品職を解かれるほどの重い罪であり、一般信徒も一定期間、領聖停止などの措置が取られる事になる[4]。しかし一般信徒の場合、配偶者の生存の如何には関係なく3回まで再婚が認められる場合もある(但し極めて稀)。
- カトリック教会では秘跡として扱われる[5]。正教会と同様に結婚の秘蹟は信徒同士で行われる事が原則であるが、教会によっては非信徒と信徒、または非信徒同士の結婚式を執り行う場合がある。カトリック教会では、離婚した配偶者が生存中の再婚は認められていない。カトリックの聖職者の結婚は東方典礼と西方典礼で異なる。東方典礼では結婚できる。西方典礼では生涯に渡って認められず、結婚すると聖職を追われる。ただし、他教の既婚の司祭的役割の者が改宗した場合は離婚を求められることは無い。結婚禁止になったのは11世紀のグレゴリウス改革以降のことである。[6]。
- 聖公会では主教も含めた聖職者も結婚および妻帯が可能であり、妻帯した主教も数多く存在する。また正教会と違い、執事・司祭となった後でも結婚が可能である。
- プロテスタントの中でもバプテストや会衆派では、会衆(教会員・信者)の同意により、神の導きと見なし結婚が成立する。比較的離婚には、柔軟である(というより、人によって考え方がバラバラである)。
イスラーム
イスラームでは婚姻は戒律により契約として処理されている。男性は女性に婚資金(マフル)を支払い、結婚する。古典イスラーム法では、ムハンマドの妻アーイシャが9歳でムハンマドと結婚し初夜の性行為を行ったというハディースに基づき、女性の結婚最低年齢は9歳である。男性の結婚最低年齢は13歳程度である。しかしイランなどを除く多くのイスラーム諸国では現在では15~18歳が結婚最低年齢である。離婚可能。離婚・死別のどちらでも男女とも再婚可能。非婚での性行為が戒律上、認められていないため、初婚のさいには、男性は童貞、女性は処女であることを求められる。そのため、初婚の際に女性が処女でなかった場合、そもそも契約条件を満たしておらず「結婚は無効」という解釈が成り立つ。
ユダヤ
ユダヤ教では結婚は神聖な行為と考えられ、未婚の男性は一人前とみなされない。結婚は神が人間を誕生させて最初に行った行為であるから、必ず結婚すべきであるとされている。今でも伝統を守る地域では男子は18歳になると結婚する。恋愛は行うべきだが恋愛はあくまで一時的なもので、結婚とは結び付かないものだと教えられている[7]。
結婚と法制度
婚姻の成立
婚姻の成立に関する法制度としては、形式婚主義と事実婚主義があり、前者はさらに法律婚主義と宗教婚主義に分けられる。
- 形式婚主義 - 婚姻の成立には何らかの手続を要するとする制度
- 法律婚主義 - 婚姻の成立には法律上の所定の手続を要するとする制度(法律上の所定の手続が届出である場合を特に届出婚主義という)
- 宗教婚主義 - 婚姻の成立には一定の儀式など宗教上の手続を要するとする制度
- 事実婚主義 - 社会において婚姻と認められるような事実関係があれば法律上の婚姻と認める制度
法定財産制
法定財産制として、夫婦の財産を共有する共有制、各自が財産を所有する別産制などがあるが、日本では別産制を採用している。米国では州によって異なり、たとえばカリフォルニア州では共有制を採用している。
離婚
夫婦間の婚姻状態を解消することを、離婚という。詳細は「離婚」を参照
日本法における結婚
この項目は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。 |
- 民法についてこの節では、条数のみ記載する。
婚姻の成立
日本法(民法)は、婚姻の成立に法律上の手続を要求する法律婚主義を採用している(739条)。実質的要件として当事者の婚姻意思の合致及び婚姻障害事由の不存在が必要とされる。また、形式的要件として戸籍法に基づく届出が必要とされる。
婚姻意思の合致
婚姻には、まず実質的要件として婚姻意思の合致が必要である。日本国憲法第24条1項は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と規定する。「婚姻意思」とは何かという点については、婚姻という身分行為に必要な届出をなす意思であるとする形式的意思説もあるが、通説は婚姻届出を出す意思を有するとともに社会通念に従った生活共同体を創設しようとする意思をいうとしている(実質的意思説)。婚姻意思が存在しない場合(婚姻意思の欠缺)の婚姻は無効である(742条1号)。
婚姻障害事由の不存在
婚姻には民法に規定される婚姻障害事由(民法731条から737条)が存在しないことが必要である。婚姻障害事由のうち、民法731条から736条までの規定に違反した婚姻は不適法な婚姻として法定の手続に従って取り消しうる(744条)が、737条違反については誤って受理されるともはや取り消し得ない(後述)。
- 婚姻適齢(731条)
- 日本における婚姻適齢は男性は18歳以上、女性は16歳以上である。婚姻適齢に達しない場合は婚姻障害事由となり744条により取り消しうる(不適齢者の取消しについては745条に定めがある)。なお、婚姻適齢につき「民法の一部を改正する法律案要綱」(平成8年2月26日法制審議会総会決定)では男女ともに満18歳としており現在議論がなされていたが、2009年7月の法制審議会の部会は男女共に18歳に統一すべきとの最終答申が報告され、政府方針として改正する方向である。
- 婚姻適齢に達した未成年者は婚姻できるが、未成年者の婚姻には一方の親の同意が必要である。未成年者は婚姻により私法上において成年者として扱われる(753条)。通説によれば、この成年擬制の効果は年齢20歳に達する前に婚姻を解消した場合であっても失われないとされているので、初婚の解消後に再婚する場合には親の同意は必要とされない。
- なお、未成年者の婚約については、未成年者(婚姻適正年齢外)であるからといって結婚をする約束(婚約)は無効にはならないという判例(大正8年6月11日大審院判決)もあるため、高校生同士が結婚の約束をしていたことが証明されるにいたった場合には法的効力をもつ婚約となることがありうる。
- 重婚の禁止(732条)
- 再婚禁止期間(733条)
- 女性は前婚の解消または取消しの日から6ヶ月を経過した後でなければ、再婚をすることができない(733条1項)。ただし、女性が前婚の解消または取消しの前から懐胎していた場合には、その出産の日から、この1項は適用されない(733条2項)。なお、再婚禁止期間につき「民法の一部を改正する法律案要綱」(平成8年2月26日法制審議会総会決定)では6ヶ月から100日に短縮すべきとしており現在議論がなされている。
- 近親者間の婚姻の禁止(734条)
- 直系姻族間の婚姻の禁止(735条)
- 養親子等の間の婚姻の禁止(736条)
- 未成年者の婚姻についての父母の同意(737条)
- 未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。父母の一方が同意しないとき、父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときは他の一方の同意だけで足りる。この同意がない場合には婚姻障害事由に該当することとなり婚姻届は受理されないが、婚姻障害事由のうち本条違反は取消原因として挙げられていないため(744条)、誤って受理されるともはや取り消し得ない。
戸籍法に基づく届出
婚姻には形式的要件として戸籍法に基づく届出(婚姻届)が必要である。婚姻の届出をしない場合(婚姻届出の欠缺(けんけつ))の婚姻は無効である(742条2号本文)。ただし、その届出が739条2項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻はそのためにその効力を妨げられない(742条2号ただし書)。
- 婚姻の方式(739条)
- 外国に在る日本人間の婚姻の方式(741条)
婚姻の無効
婚姻意思の欠缺や婚姻届出の欠缺は婚姻の無効原因であり、また、婚姻の無効原因はこの二つに限られる(742条)。
詳細は婚姻の無効へ
婚姻の取消し
民法731条から736条までの規定に違反した婚姻(744条)、また、詐欺または強迫による婚姻(747条)は法定の手続に従って取り消しうる。これらは取消しであるから取り消されるまでは当該婚姻は一応は有効とされる。また、婚姻の取消しの効力には遡及効はなく、将来に向かってのみ効力を生ずる(748条1項)。
- 婚姻取消事由及び取消権者(744条)
- 婚姻の取消しの効力(748条)
詳細は婚姻の取消しへ
婚姻の効力
夫婦同氏の原則
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する(750条)。なお、夫婦の氏につき「民法の一部を改正する法律案要綱」(平成8年2月26日法制審議会総会決定)では、夫婦は婚姻の際に定めるところに従い夫もしくは妻の氏を称しまたは各自の婚姻前の氏を称するものとし、夫婦が各自婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは夫婦は婚姻の際に夫または妻の氏を子が称する氏として定めなければならないものとしており、夫婦別姓を導入すべきか否かやそれを導入することとした場合に子の氏をどのように決定すべきかについては現在議論がなされている。
同居・協力義務
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない(752条)。
婚姻による成年擬制
未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなされる(753条)。ただし、成年擬制の効果は私法領域に限られる(公職選挙法・未成年者飲酒禁止法・未成年者喫煙禁止法などの公法領域には及ばない)。
夫婦契約取消権
夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない(754条)。夫婦関係が実質的に破綻している場合には形式的に婚姻関係にあっても夫婦契約取消権を行使することはできない(昭和42年2月2日最高裁判所判決)。なお、夫婦契約取消権につき「民法の一部を改正する法律案要綱」(平成8年2月26日法制審議会総会決定)では民法754条の規定は削除すべきとしており現在議論がなされている。
夫婦財産制
婚姻によって夫婦間に生じる財産関係、すなわち夫婦の財産の帰属・管理および生活費の負担などを規律する制度。民法756条以下により、婚姻届出前に契約によって定めることが認められている(契約財産制)。契約がない場合は法定財産制に従う(755条)。
- 契約財産制
- 契約財産制とは夫婦財産契約に基づく財産関係である。夫婦財産契約とは夫婦が婚姻の届出前にその財産関係についてなす契約であり、夫婦財産契約を定めた場合には法定財産制の適用はない(755条反対解釈)。日本で夫婦財産契約が締結される例は極めて少ないのが実情である。
- 法定財産制
- 法定財産制として、夫婦の財産を共有する共有制、各自が財産を所有する別産制などがあるが、日本では別産制を採用している。
- 婚姻費用の分担(760条)
- 婚姻生活の費用は、夫婦の「資産、収入その他一切の事情を考慮して」分担する。
- 日常家事による債務の連帯責任(761条)
- 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告して責任を免れることもできる。
- 夫婦間における財産の帰属(第762条)
- 夫婦の一方が婚姻前から有する財産および婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(単独所有)となる(その管理も各自行うこととなる)。夫婦のどちらに属するか明らかでない財産は共有と推定する。
婚姻の解消
法律上、婚姻関係は夫婦の一方が死亡した場合、夫婦の一方が失踪宣告を受けた場合、離婚が成立した場合に解消される。
日本の結婚状況
太平洋戦争(第二次世界大戦)の最中に日本人男性が多数戦死した。戦争で男性の数が減ってしまったのに比べれば、女性の数ほうは さほど減っていなかったので、戦後、女性は数的に余ってしまうことになった。結婚を強く望んでいても、どうにも結婚にたどりつけない女性が多数あらわれることになり、それは社会問題としても取り上げられることもあった。大数の原理はどうしようもなく、結婚できないまま歳をとってしまい、そのまま一生を終える女性も多かった。運良く戦争を生きのびた日本人男性の視点から見れば、結婚相手とすることができる女性は多数余っていた状態なので、比較的優位な立場で結婚相手を選ぶことができた(つまり、戦後の日本人男性は結婚相手としてもてはやされた。簡単に言えば「モテた」)。
かつては、(男性はただ)「まじめに働いて、やさしくていい人」というだけで結婚できたともいう。待っていればだれかが結婚話を持ってきてくれて、自分はその流れに乗っているだけで自然と結婚できたという。お見合いという形式ばったものでなくても、日常的に近所のおばさんなどが「...軒先の○○さんの次女はどう?」などと話を持ち込んできたり、地域の寄り合い等経由で話が持ち込まれていたという[8]。
高度成長期には、右肩上がりだったので、定職に就いている人や、手に職をつけている職人さんなら、「暮らしは良くなる」と予測・期待して結婚できた。また高度成長期、多数の企業が人々を大量に正社員として雇い入れ囲い込んでいた。女性は「お嫁さん候補」として入社しており、職場は、男性と女性が出会う場になっていて、いわば「集団お見合い」の役割を果たしていた。当時、男も女も順当にゆけばカップルになり、結婚すれば女性は会社を辞めてゆくのが習慣であった。辞めるということは、常に新しい人と入れ替わるということであるので、男性から見れば、「今年はダメ」でも「では次の年」というように、女性を選び放題だった[9]。[10]。当時、ほとんどの女性にとって、結婚する以外に生きてゆく術(すべ)がない時代であったので、男性からプロポーズされれば、右肩上がりの経済を思い描きながら結婚した[11]。
このように、近所やコミュニティの人々のお世話や、集団見合い的な職場があったおかげで、日本は1970年代まで、「95%の人が50歳までに結婚する」という、結婚率が高い国家であった。そして、特に事情がない限り、大半の人が20代のうちに結婚をして、2人程度の子供を持つということが行われていた[12]。
日本においては、先進国の中で比較すると、結婚は非常に一般的であるといえる。婚外子もわずか2%である。日本の正式婚の数は、1978年以降、現在Template:いつ?に至るまで年間70万件台を維持しているとされた(『現代用語の基礎知識』自由国民社、何年版?)。
だが、未婚率は年々上昇しており、30代前半で未婚の男性の割合は1960年の9.9%から2005年には47.1%まで上昇した。生涯未婚率も上昇しており、2005年時点で男性15.4%、女性6.8%となった。
日本の平均初婚年齢と未婚率の推移
(平均初婚年齢:厚生労働省統計情報部『人口動態統計』より)
年 | 男性(歳) | 女性(歳) |
1950年(昭和25年) | 25.9 | 23.0 |
1960年(昭和35年) | 27.2 | 24.4 |
1970年(昭和45年) | 26.9 | 24.2 |
1980年(昭和55年) | 27.8 | 25.2 |
1985年(昭和60年) | 28.2 | 25.5 |
1990年(平成2年) | 28.4 | 25.9 |
1995年(平成7年) | 28.5 | 26.3 |
2000年(平成12年) | 28.8 | 27.0 |
2005年(平成17年) | 29.8 | 28.0 |
2008年(平成20年) | 30.2 | 28.5 |
未婚化・晩婚化
平均結婚年齢は年々上昇し、未婚率も上昇しており、非婚化・晩婚化が進んでいる。
その要因については、一般的には女性の高学歴化や社会進出(賃金労働者化)が言われてきた。女性が自身で相当程度の収入を得られる社会になったことで、「結婚しないと生きていけない」というような状況ではなくなった、という指摘である。
だが、社会的な要因は相互に複雑にからみあっており、他にもいくつもの指摘がある。以下で説明する。
- 男性の収入の不安定化
- 男性の場合、収入が低くて将来の見通しが不安定だと、結婚率が低くなる[13]。結婚を安定させるだけの収入がないのに、結婚どころではない、ということである[14]。それはまた、自分が生きてゆくだけでも大変なのに、他の人を抱え込んで面倒を見ている余裕など無い、女性の存在が重荷だ、女性から「面倒を見てもらえる」などと期待されるのは怖い、わずらわしいということでもある(男性が女性に期待していることについては後述)。(女性の場合は、年収と結婚率に相関関係はみられない、とされた)[15]。この現象は、1980年代から零細農家や小規模商店の男性が結婚できないという形で徐々に現れていたという[16]。[17]
- 1990年頃までは、大多数の男性は年功序列制度により、若い間は収入が低くても将来収入が増える見通しがあり、収入及び将来が不安視されることはなかった。だが、1990年代に入り、ニューエコノミーへの転換やグローバル化の進展に伴い社会構造が変化した結果、少数の正社員と多数の非正社員が必要な状況へと変わっていった。この結果 多数の男性が、収入が低くて将来の見通しが不安定な状態になり(たとえばフリーターなど)、またそこから抜け出すことができず、結婚しづらい状況となった[16]。また、男性の収入が低下したことの要因のひとつに、女性の社会進出により女性の労働力が労働市場に安価に大量に供給されるようになった影響で、競合が起き、需要と供給の関係により、男性の仕事の市場価値が下がってしまい、労働単価、平均収入が下がったことが指摘されることもある。つまり女性から見ると、皮肉なことに、自分たちの社会進出と収入獲得により、男性全般の収入を押し下げている面があり、男性を経済的にあてにできる存在であった状態から、さほどそうではない状態に転落させてしまっており、(気持ちが変わって、もたれかかりたくなっても)自力で働きつづけざるを得ない状況を作り出してしまっている、といった指摘である。
- 男性の視点から見て、女性と同居することの魅力が減少したこと
男性が低収入で結婚できない事例が挙げられはするが、それは物事の一面でしかない、ともされる[18]。
実際には、男性で正社員の職についていて収入が良くても、(男性自身の気持ちとして)結婚しない、結婚したがらないことも増えているのである[19]。結婚に特にメリットを感じない、女性と暮らすことにあまりメリットが感じられない、としている男性が増えているのである[20]。
かつて、自宅で食事をするということは、原則的に全て材料から調理をし料理を作ることを意味していた時代があった。そして、それが即、女性が自宅で作ることを意味した時代があった。だが、現代ではコンビニなどがあるため、食事の点で、結婚しなくても男性は何ら不便を感じなくなっている、といったことはしばしば指摘されている[21]。また、かつては家事全般(洗濯、炊事、掃除等々)は女性の労力・力量に頼るところが大きかったが、現代では洗濯機、炊飯器、食洗機、掃除機 等々等々の便利な家電製品があり、また外食産業や中食(なかしょく)も発達しているので、なにも女性に頼らなくても、男性だけで十分快適な生活が成り立つので、独身男性の視点から見て、女性と同居することのメリットが減少している、あるいは男性から見て女性の存在自体の魅力が減少している、と指摘されることもある。[22]
また、かつての日本には、「結婚して一人前」とする周囲からの社会的な圧力があった。たとえば、かつては「結婚しないと 出世が遅くなる」ということが知られている企業も多かった[23]。男性は、仕事社会に生きており、職場の社会的圧力には弱い生き物であり、自身の出世にも響くような、その手の社会的圧力があれば、それに同調せざるをえなかった[24]。独身をつらぬこうとするだけで勇気が要ったほどである[25]。かつては、社会的な「常識」のような圧力が、男性全般を、ある年齢までに結婚するように駆り立てていた[26]。だが、現代では、男性はそのような社会的な圧力は受けていない[27]。むしろ、結婚話はセクハラとなり問題となりえてしまう。[28]そうなったので、男性の場合、いくらでも結婚を先延ばしすることが可能となっている[29]。男性は女性とは異なって、子供が欲しい場合でも、(例えば)"40歳ごろまでに持たなければならない" といった生物学的な年齢的な制約は存在しない。(例えば、極論を言えば、70歳でも80歳でも子供をつくることができる、ということが言われることがある)。このようにして、男性は、結婚をすること自体のメリットが見出せなくなったり、(子供を持つことを望む場合でも)あるタイミングで結婚しなければならないという必然が見出せず、結婚に躊躇する傾向が増大したのである。[30]
- プライバシーが尊重される社会になり、結婚話が持ち込まれなくなったこと
前述のごとく、かつては近所のおばさんや地域の寄り合いの人脈が結婚話を持ち込んでくれていた。だが現代では、プライバシーが重視される社会になり、結婚話を持ち込む世話好きな(おせっかいな)おばさんはいつのまにか消えてしまい、地域での人と人のつながりも希薄になり[31]、さらにマンション住まいともなると隣家の家族構成もわからないこともしばしばで、すっかり結婚話が持ち込まれなくなってしまったのである。かつては会社でも上司が「お前、そろそろ結婚はどうか」などと話を切り出し結婚を世話することも、ごく普通に行われていた。さらに上司が自分の娘と部下を結婚させるなどということも行われていた[32]。だがプライバシーが尊重されるようになってからはそういったことも、ほぼ無くなった。そのような話が持ち出されると、その時点で逃げ出してしまうという[33]。
- 社内恋愛、社内結婚の減少
- 岩澤美帆、三田房美の『日本労働研究雑誌』2005年1月号「職縁結婚の盛衰と未婚化の進展」などで指摘されている。従来、社内恋愛は大切な出会いの場であった。ところが、就職氷河期が原因で女性社員も採用が減り、インフォーマルな付き合いも減ることにより、社内恋愛の機会が減少、機会の減少に伴い、社内結婚も減少したとした[34]。
前述のごとく、かつては、お見合いをするような気分でふわふわと会社に入社する女性が多かったが、近年では、そのような気持ちでなく、生涯仕事をする場として入社する女性が増えていることもあるという[35]。社内恋愛の衰退は1994年ごろからおきており、2000年の調査ではまだ一応、「結婚にいたる出会いの場」は「職場・仕事の関係」が1位ではあったが、2005年には2位に落ちたという[36]。
若い男性では、社内結婚を敬遠している人もいるという[37]。現在、女性は一生働ける制度になっていることも多く、実際そういう人も増えているので、「社内結婚をしてしまうと、もし離婚した時に職場で気まずくなる。ただでさえ複雑な職場の人間関係で悩みを増やしたくない」と思う男性がいるという[38]。
また、人々と性と結婚の関係についての意識も変化しており、かつては社内でつきあったら必ず結婚しないといけないと考えられていたが、現在では人々は自由恋愛を受け入れているので、つきあったことでセックスしたからといって結婚に至らなくても、今では誰も気にもしないという[39]。よって、セックスが結婚と結びつかず[40]、結婚成立への駆動力とはならなくなっているのである。
また、社内で男性が女性にプロポーズすることや結婚話をセクハラとして扱われる事例が頻発しており、もしもそのような状況に陥った場合男性側が社会的地位を喪失する場合が多いため、男性が社内恋愛に及び腰になっているとの指摘もある[41]。
- 女性の専業主婦志望が近年の社会状況にマッチしていないこと。「女性も収入をもたらして欲しい」との男性の望みに女性が気づいていないことや応えようとしていないこと。
女性が専業主婦を希望していることを嫌がる男性が統計的に見て増えてきている[42]。結婚後も、女性には働いてもらい、しっかり収入を家庭にもたらして欲しいと考える男性が増えているのである。(2005年の調査では、「妻には再就職して欲しい」の38%と「妻には主婦業および仕事で収入を得ることを両立して欲しい」の28%を合計すると、66%ほどの男性が、何らかのかたちで女性には仕事で収入をもたらして欲しい、と思っている。それに対して、女性に専業主婦になって欲しいと望んでいる男性はわずか12%にすぎない)。これは何も、女性にバリバリのキャリアウーマンとして仕事漬けで年収800万だの1000万円だのを稼ぐといったようなことを期待しているわけでは全然なくて、手堅く仕事をして 数百万円程度("小さいほう"の"数百万"程度)を稼いでくれることを男性は期待しているのだろう、と白河は分析している[43]。高度成長期もバブルも既に終わり、慢性的に不景気が続くようになってしまった近年の日本では、ひとりの人間が収入を100万円増やすことも至難であるので(それどころか収入が次第に下がる傾向にあり)、女性にも稼いでもらえるのと そうしてもらえないのとでは、一家の収入(や可処分所得)の額が1.5倍や2倍ほども異なってきてしまい[44]家計の運営上、切実な問題なのである。
ある程度の年齢にもなっているのに仕事もしっかりしていなかったり貯金も無いような女性は、男性におぶさろうとしているのが分かるのであり、近年では男性は自分におぶさろうとしている女性を "怖い" と思う、という[45]。これはなにも低収入の男性だけがそう思うのではなく、一部上場企業に勤め収入にも恵まれている男性などでも「30歳にもなって貯金もろくにない女性は怖い」と言うという。お見合いの「釣り書き」(略歴、概略説明)の内容で男性におぶさろうとしていることが読み取れてしまう女性では、100回以上お見合いしても話がまとまらず、近年ではその「釣り書き」だけで断られて会ってももらえないことも増えているという[46]。
男性が何のことを怖いと感じたり、何に怒りを感じているかについて若干説明を加えると、かつて日本では、働いてくださっている人に対しては、感謝の気持ちを抱くことが、人として当然のことだとされていた。だが、いつのまにか日本では、感謝の念を抱くという、人間として当然のことを忘れてしまっている女性が増え、自分のために労働してくれている人に対して感謝の念を持つことすらできない女性が増えているという[47]。(世界の現実は厳しく、世界各国を見渡せば、男性も女性も子供も関係なく、家族全員が労働力として全力で働いて、ようやくなんとか食いつないでいる、あるいは、それでも食ってゆけないという人々も多いのだが)、日本では、相手の男性がたまたま健康で働いてくださっているおかげで、ありがたいことに家庭に収入がもたらされている、ということにも気づかず、傲慢にもそれを「当たり前」だと見なし、男性が稼いできた金であるにもかかわらず、稼いだ当人に渡す金を「渡す」ではなく、傲慢にも「あげる」などと表現する女性が増えているのだという[48]。誰かが働いてくださっていることへの感謝の気持ちが表明されれば、働く人はより快く働くことができる[49]。(だが、働くことが「当たり前だ」などと言われたりしたら、人はもはやそういう傲慢な発言をする人のためには、できれば働きたいとは思わないものであり、できれば、そういう発言をするような人と結婚することは最初から避けたい、と思うわけである)日本の最近の専業主婦は、(自分で調理もせず)ファミレスで昼食を摂ったり、ケーキバイキング(ケーキの食べ放題)を楽しんだり、美容室やエステや日帰り旅行へ行って、男性が稼いできてくださったお金を、自分の贅沢のために勝手に使っておきながら、(つまり現実には自分の贅沢のためだけにさんざんお金を使っておきながら、現実のありさまと違って)「私にはこづかいが無い」などといった傲慢で勘違いをしたセリフを吐く女性がいるのだという[50]。最近では、そういった日本の女性の、人間としての異常さ、傲慢さに気づいて、男性は女性に対して「いいかげんにしろ」と思っている可能性はある[51]。
年 | 専業主婦 | 再就職 | 両立 |
1987年 | 37%程度 | 37%程度 | 10%程度 |
1992年 | 30%程度 | 44%程度 | 11%程度 |
1997年 | 20%程度 | 43%程度 | 18%程度 |
2002年 | 18%程度 | 47%程度 | 19%程度 |
2005年 | 12%程度 | 38%程度 | 28%程度 |
専業主婦を志望する女性にとっては男性の収入が低く、将来の見通しが不安定だと結婚相手として認識しづらくなる、と山田昌弘は表現した。[53]。ただし、女性の専業主婦志望は、フェミニスト、反フェミニスト双方にとって都合が悪く、双方から圧力がかかるため、要因として挙げづらいという[16]。
- フェミニスト側:「女性が(仕事など)社会で活躍できる機会を求める」という立場を取っているため、女性自らが仕事を辞め主婦になることを望んでいるということになると「活躍できる機会を求める」必要が無くなってしまう、という。
- 反フェミニスト側:「女性が社会進出した結果、未婚化、少子化が進んでいる」という立場を取っているため、実は女性が社会進出をそんなに望んでいないとなれば、自分たちは見当外れのことを言っていたことになり、振り上げた拳を降ろす先が無くなってしまう、という。
「結婚後も面白い、やりがいのある仕事を続けたい女性はいる」という反論もあるが、上述したように社会の構造が少数の正社員と多数の非正社員が必要な状況へと変化しており、定型的で単純な作業をしている多数の非正社員は、「面白く、やりがいのある仕事」はできておらず、「結婚を機に楽な専業主婦になりたい」と望む女性の方が多いのだという[16]。
ただし、「専業主婦となっても生活水準を維持できるだけの収入がある男性」は少なく、もし"低収入の男性が結婚相手として選んでもらえない"などという言い方ができるのであれば、専業主婦となることを望む女性もまた、少数の高収入の男性によって、少数だけが選別され(他は切られる、敬遠される)立場になっているという言い方もできるという[16]。
- 女性の結婚観の変化
- 白河桃子が指摘。『負け犬の遠吠え』(酒井順子著)、『だめんず・うぉーかー』(倉田真由美著)により、結婚への意識と男性への意識(DVをはたらくなどのダメな男性を避けたい)が変化しているという[34]。
各国や地域の状況
ヨーロッパ
中世において、結婚の記録は教会の教区簿冊に頼っていた。そのため、キリスト教の影響力が弱くなる等によりキリスト教によらない結婚や事実婚が増えると、結婚の記録に不備が生じる。結婚記録の不備は特に相続の場面において社会問題となった。そのため、例えばイギリスは法律により国教会によらない結婚は結婚として認めず、違反者には重い罰金を科すなどの政策をとったことがある[54]。
現代のスウェーデンでは56%の人が未婚のまま出産する[55]。多くはそのまま生涯未婚を通す。フランスでも半数以上が未婚のまま出産を行っている[56]。こうした婚外子は年々増加しつつある。こうした中で結婚しなくても夫婦と同等の権利になれる制度が法的に定められ、あくまでこの範囲の中で夫婦として子育てを行い、本当に愛し合い一生連れ添いたいとお互い思った場合のみ結婚を行うという考えが一般的になりつつある。
アメリカ
アメリカでは結婚は一般的なものの、46%とほぼ2組に1組の高い離婚率を示しており、先進国ではトップに位置している[57]。
中国
概要
法律の最低結婚可能年齢は、男性22歳、女性20歳(2008年時点)となっている[58]。
また、一人っ子政策により「男性が余っている」というイメージが強いが、結婚当事者の意識としては「女性が余っている」状況にあるという。大きな要因としては「女性の方が婚期が短い」ことが挙げられる[60]。都市部の結婚適齢期の未婚の世代でも、女性の方が多い状況にある[58]。この問題については、三高#中国も参照されたい。では男性はどこで余っているかというと、農村部となる。地方の低収入の男性が「数千万単位で溢れている」[61]より引用状況にある。
一方で、金持ちになった男性は二号、三号の妾を囲うことが、ある種のステータスとなっている。詳細は妾#中国を参照されたい。
中国における意識
中国における結婚への意識として、以下のものがある。
- 夫婦の年齢は、夫の方が高い方がよい(男大女小と言う))[58]
- 結婚するには、まず家[62]と車が必要[59]
- こうして住宅を買い、ローンで首が回らなくなる者は房奴と呼ばれ、その増加が社会問題となっている。房奴については中華人民共和国#借金苦の増加を参照されたい。
- 結婚は女性にとっては働く上で不利
- 企業の求職時に「未婚に限る」という条件がある場合もある。そのため、結婚していることを隠し未婚と偽って働く女性をさして「隠婚族」という言葉が生まれた(もちろん、ばれた場合は虚偽親告の罪に問われる)[63]。
中国における歴史
中華人民共和国成立以前は、親が縁談をまとめており、デートや自由恋愛といったものはなかった[64]。中華人民共和国成立(1949年)後は、中国共産党が党への忠誠心などを勘案しながら結婚の許可を行うこととなった[58]。改革開放(1978年)後は、自由恋愛により結婚することができるようになった[58]。なお、1966年からの文化大革命の際には、多くの知識人が地方へと下放され、そこで地元の女性と結婚することとなった。そのため、改革開放後に離婚が自由にできるようになると、こうした夫婦が離婚するケースが各地でみられた[64]。
1990年代後半からの経済成長とそれに伴う経済格差の拡大により、結婚に際し愛情よりも経済力を優先する風潮が強まり、若い女性が生活向上のための手段として玉の輿を狙う姿がみられるようになった[65]。こうした世論を反映するように、成金が80後(後段参照)の女性を狙い、女子大に花嫁募集をかける動きが2006年頃から現れた(こうした女子大への求婚活動は「社会征婚進高校」といわれる)[65]。
中国の世代における傾向
以上のような背景を踏まえた上で、世代の傾向として以下のようなものがあるという。
- 70後(1970年代に生まれた世代)
- 上述したように、親が文化大革命により下放した知識人の場合、離婚するケースがある。こうした家庭で育ち親の離婚を経験した70後の女性は、結婚に対するネガティブなイメージを抱くこととなる[64]。また、いわゆる三高問題の対象でもあり、「結婚できない」ことが問題となっている。詳細は三高#中国を参照されたい。
- 80後(1980年代に生まれた一人っ子政策後の世代で、親や祖父母からの愛情を一心に受けている。何不自由なく育ったため、大学卒業後に就活失敗による失業や低賃金な職場への就職により、生活水準が下がることを恐れる[64]。小皇帝も参照)
- 小皇帝でも述べられているが、世代として「贅沢に慣れており金遣いが荒い」「我が強い」「わがままで自己中心的」「家事ができない」「競争時代に生きており、より良い条件を求める」といった問題点が指摘されている。また、結婚への価値観もそれまでの世代と異なっており、結婚に伴う責任などもあまり重く考えない。そのため、「すぐに結婚する」「すぐに妊娠する(させる)」「すぐに離婚する」(それぞれ、「閃婚族」「閃孕族」「閃離族」と呼ぶ。また、まとめて「閃光族」と総称する場合もある[66])現象が起こっており、社会問題となっている[66]。
表現に関して
結婚することを一般的に「籍を入れる」と言ったり、特にマスコミなどでは「入籍」と表現する場合があるが、この意味での「入籍」は、戸籍法上の「入籍」とは意味が異なる。一般に言われる「籍を入れる」・「入籍」は、単に「婚姻届を提出することで、男女が同じ籍になる」という意味である(出典:広辞苑)。
これに対し戸籍法上の「入籍」とは、既にある戸籍の一員になることである。既にある戸籍とは筆頭者が存在する戸籍であり、これに入るには筆頭者の配偶者になるか、子(養子含む)として戸籍に加えられるしかない。結婚は、戸籍法上では初婚の場合(分籍をしていなければ)、婚姻届が受理されることにより、元々お互いが入っていた親の戸籍から離れて新しく戸籍が作られ、そこに2人が構成される。その為、このケースでは戸籍法上の「入籍」とは言わない。ただし、離婚や分籍の前歴があれば当人が筆頭者であるため、その戸籍に配偶者を迎え入れればこれは戸籍法上の「入籍」と呼ぶことも出来るが、一般的ではない。
なお、まれに「婚姻届」ということを、「入籍届」と表現されることがあるが、入籍届は父母の離婚や養子縁組に際し子が別の(基本的には非筆頭者側の)戸籍に入るための届出書であり、婚姻届とは全くの別物である。
脚注
- ^ 百科事典などでも「結婚」ではなく「婚姻」を項目名として立てている例は多い。(『日本大百科事典』など)
- ^ 一般に死別・離別は未婚には含まれないが、アンケートで未婚・既婚から二者択一とする場合など、曖昧になっていることも多い。行政機関の統計においては、既婚の代わりに有配偶という用語を使い、未婚・有配偶・死別・離別で分類していることが多い。独身も参照。
- ^ 正教会にわくわくの好奇心を抱いておられる方に(結婚式について) - 名古屋ハリストス正教会
- ^ これは懲罰的措置ではなく精神的治療に必要な期間とされている
- ^ カトリック教会の結婚観 - 東京大司教区
- ^ 聖職者の性行為も罪であるとされ、少年信者に対する性的虐待が問題となっている(カトリック教会の性的虐待事件を参照)
- ^ ユダヤの力(パワー)―ユダヤ人はなぜ頭がいいのか、なぜ成功するのか! (知的生きかた文庫) 加瀬 英明 著
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.23
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.23
- ^ 美しい女性から先に売れてゆき、「25歳の女性は売れ残りのクリスマスケーキ」などとすら言われたという(白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.16)
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.23
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.14
- ^ 山田昌弘などが指摘している
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』
- ^ 『労働政策研究報告書No.35「若者就業支援の現状と課題―イギリスにおける支援の展開と日本の若者の実態分析から―)」』独立行政法人労働政策研究・研修機構
- ^ a b c d e 『新平等社会』著:山田昌弘 文藝春秋 2006年9月
- ^ だが、政府・自治体やマスコミでは「低収入の男性を差別することになる」としてタブー視され、触れられなかったという(『新平等社会』)
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』PHP研究所、2009、p.18
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.18
- ^ さらに、現代では、男性で、料理も自分でできる、という人が、かつてに比べると増えている。その一方で、料理がまともにできないような女性の比率が、かつてに比べるとかなり増加していて、そのようなケースでは(外食や中食の発展とあいまって)男性の視点から見た時の、女性の存在のメリット・魅力の減少につながっていることもある。
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.18
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.18
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.18
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.19
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.18
- ^ セクハラとは?
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.18
- ^ 他にも、情報化が進んだ現代では、女性全般の心の醜い実態が、男性に筒抜けになるようになったことも、男性が結婚を避けるようになった理由として挙げられよう。
例えば、世の女性が結婚や配偶者について何を思っているかが検索エンジンのキーワード表示に現れることがある。『Google』で2つ以上のキーワードを記入して検索をする場合、キーワードとキーワードの間にスペースを記入して検索を際、スペースを記入した時点で「より多く検索されているキーワードの組み合わせ」や「検索結果として表示するサイト数が多いキーワードの組み合わせ」を表示してくれるわけだが「夫」と入力すると「死んでほしい」「嫌い」などが表示されるという。googleで夫の後にスペースを入力すると
このような情報や記事を男性が見れば、男性が抱きがちな、フィアンセや、配偶者の心の内容についての幻想は消え去ることになる。それどころか、女というのは恩知らずで、独特の恐ろしい考え方をする生き物だ、と気づくようになり、結婚にしりごみするようになるわけである。 - ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.25
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.25
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.25
- ^ a b c 「【第28回】社内恋愛の衰退で“結婚氷河期”到来 新たな「お嫁さん候補」は派遣社員?!」『日経ビジネスオンライン』日経BP社、2008年8月27日付配信
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.26
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.25
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.25
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.26
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.26
- ^ セクハラとは?
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.33
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.32-35
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.32-35
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.33
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.33
- ^ 夫の小遣い 2、3ページ目も含む
- ^ 夫の小遣い 2、3ページ目も含む
- ^ 夫の小遣い 2、3ページ目も含む
- ^ 夫の小遣い 2、3ページ目も含む
- ^ 夫の小遣い 2、3ページ目も含む
- ^ 白河桃子『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』p.33
- ^ 『下流社会』著:三浦展 光文社 2005年9月
- ^ 『近代統計制度の国際比較』安本稔編集 2007年12月 日本経済評論社 ISBN9784818819665
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- ^ a b c d e f 遠藤誉「第13回 全国人民代表大会の代表が「姐弟恋」を奨励 ~でも「anego」との恋は命がけ」『日経ビジネスオンライン』日経BP社、2008年8月8日付配信
- ^ a b 「大都市で晩婚化進む、結婚は家と車を購入してから」recordchina、2008年1月18日付配信
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- ^ 遠藤誉「第5回 <A女>の影に潜む「隠婚族」の女たち 「仕事にマイナスになるから」結婚をひた隠す」『日経ビジネスオンライン』日経BP社、2008年4月11日付配信
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関連項目
- 結婚式
- 結婚披露宴
- 結婚記念日
- 結婚適齢期
- 結婚氷河期
- 婚活
- すぐ婚
- 早婚
- 離婚 - 再婚
- 後妻打ち - 中世日本で再婚時に行われていた風習
- 共働き - 結婚を機に仕事を辞めて専業主婦などにならず、夫婦が結婚後も働き続けること
- 三高、三低 - 結婚相手に求める条件の一形態。内容は、高収入や低リスクなど
- 獄中結婚
- 見合い
- 政略結婚
- 非婚
- 連帯市民協約 - PACS(パックス)とも呼ばれる、フランス発祥の結婚と同棲の間ともいえる新しい家族形態
- 求婚
- 婚約
- いいなずけ、許婚
参考文献
- ゼクシィ編集部『結婚準備きちんとブック』メディアファクトリー、2002年4月 ISBN 4840105634
- 「いちばんシアワセ」作成委員会『人もうらやむ結婚大成功マニュアル―婚約・挙式・披露宴・二次会・ハネムーンから新生活まで幸せになるためのけっこん最低「予備」知識』双葉社 2002年11月、ISBN 4575712280
- 加藤秀一『恋愛結婚は何をもたらしたか』 ちくま新書 筑摩書房 ISBN 4480061878
- ジョン・R・ギリス 北本正章 訳『結婚観の歴史人類学』勁草書房 ISBN 4326601922
- 『「婚活」時代』山田昌弘・白河桃子(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
- 『結婚氷河期をのりきる本!』(メディアファクトリー)
外部リンク